我が国で男性更年期が認知されたのは、1990年代、漫画家のはらたいらさんが男性更年期障害と診断されたのが大きな契機でした。
アメリカ合衆国でも、同時期に男性更年期障害が医学的にクローズアップされましたが、その中に、成人男性の男性ホルモン=テストステロン値が、1987年に比べて1997年が優位に低下しているというものがありました。つまり、男性更年期障害の割合は、年々増加しているのではないかという推測です
そして、この男性ホルモンが低下する傾向は、全世界的な傾向ではないかとも言われています。
男性ホルモン低下の原因については、諸説ありますが、もっとも関与が強いとされているものが、ストレスと食事です。
先ずは、その食事の話をします。
世界の人口は、紀元前後から10世紀にかけて3億人程度で一定、増加しませんでした。その最大の原因が食糧生産の限界、つまり人口を養う食物を作ることが出来なかったのです。その後、作物の品種改良などによって、農業における単位面積当たりの収穫量は激増し、18世紀以来の世界人口の爆発的増加を招いているのです。
品種改良された作物は、単位面積当たり数倍の収穫がありますが、土地の持っているミネラルなどの微量元素は変わらないため、一つ一つの作物の持つ、ビタミンやミネラルなどの微量元素は少なくなります。よくお年寄りが、「昔の野菜は味が濃かったが、最近の野菜は味が薄い」と言っているのも、この辺の事に由来します。
微量元素と男性ホルモンに関連して、国の兵士の強さという観点から話をします。
男性ホルモンが高い=強い兵隊が多いとして、過去の事例から考えます。
よく、“穀倉地帯の国の兵士は弱い”という話を聞きます。大平原の穀倉地帯です。例えば、中国の中原地区やフランスの穀倉地帯、北イタリアのロンバルディア平原などです。これらの国の軍隊は、個々の兵士の力という面では劣っていました。(そのため、ナポレオンなどは、軍隊の戦術という面を重要視したのです。)
中国を例に取ると、三国志でお互いの戦っている分には弱いもの同志で良かったのです。しかし、中国の北にはモンゴルがありました。モンゴルは、遊牧を常として、野山の野菜を採って食す。粗食ではあるが、非常にビタミンやミネラルが豊富な食事をしています。その結果、モンゴルの兵士は強い。あまりにも強いので、中国は恐れをなして万里の長城などという途轍もない防護壁まで作ってしまった程です。
また、フランスは自国の軍隊だけでは心もとないと考えたのか、傭兵を多く雇い入れます。フランス外人部隊、映画などでも有名ですね。
その傭兵として、勇名を馳せたのがスイス人です。山岳地帯に位置する遊牧の民。彼らのビタミンやミネラルの豊富な粗食は、体内に有効な微量元素を取り込み、男性ホルモンの量的および質的充実に役立っていると考えます。
この様に、食物の摂取における微量元素は重要ですが、それでは現代の我々はどうすればよいのでしょうか。
理想的には、品種改良前の原種に近い野菜や穀物を食べるのが良いのですが、現実的には不可能です。三億人分の食量しか自給できなかった時代に戻すことはナンセンスですし、それ以前に、慢性的な低栄養状態が人類の寿命に著しい悪影響を与えていたことを考えると、現代の“質は良くなくても、量的に十分な食糧生産体制”を元に戻すことは、医学的には百害あって一利なしと言わざるを得ません。
では、どうしたらよいのでしょう?
そのカギは、日常の食生活でのちょっとした工夫と、サプリメントなどを有効に使うことにあります。
次回は、日常の食生活についてのお話をします。
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