新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言により行動変容が求められている昨今、ステイホームが順守されるにしたがって困った事があります。
その一つが、運動不足とカロリー摂取過多などによる体重増加、すなわち“コロナ太り”です。
悩ましいコロナ太りにはどうしたら良いかの話をします。

先ずは体重増加のメカニズム=仕組みから説明します。
体重増加の仕組みは単純です。摂取カロリーが消費カロリーを上回ると7700カロリーで1㎏の体重増加となります。逆に7700カロリー少なくなると1kg減るのです。
摂取カロリーは食事由来のもののみ。
消費カロリーは、生命活動を行う上で最低限必要な基礎代謝+運動での消費カロリーの合計となります。
基礎代謝は基本的には一定ですので、体重の増減は食事のカロリーと運動で消費するカロリーの差で決まります。
要するに、食べすぎれば太るし、食節制すれば痩せる。運動すれば痩せるし、引きこもっていれば太るという図式です。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大防止のための自粛=ステイホームが推奨されていますが、それによる外出機会の減少による運動不足と、デリバリーによる高カロリー食や飲酒量増加などによるカロリー摂取量増加が招く肥満=コロナ太りは防がなくてはなりません。
それにはどうしたら良いのでしょうか。
もちろん基本となるものは、食摂生に適度な運動となります。肥満防止に王道はありません。
しかし、肥満防止の手助けをする手段ならあります。
私は、個人的には漢方薬をお勧めしています。

肥満に対して用いられる代表的な漢方薬は三つあります。『防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)』、『防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)』、『大柴胡湯(だいさいことう)』です。それぞれの漢方の使い分けについて簡単にお話しします。

上記のうち、先ず最も多く使われる漢方は『防風通聖散』です。防風通聖散は実証=比較的体力があり、腹部に皮下脂肪が多く(いわゆる太鼓腹を呈する人)、胃腸は強く食が多いが便秘をするタイプの人が飲むのに適した漢方です。メタボな中年オヤジとかがイメージキャラクターです。
便秘が強い人には、防風通聖散に含まれている大黄(だいおう)という生薬を増量して効果増強をはかる場合もあります。

色白で筋肉が軟らかく、水太りの体質の人には『防己黄耆湯』が最適です。この体質のイメージキャラクターは、色白でぽっちゃりした女性で、すぐ汗をかき、尿が少なくなりがちで、すぐ浮腫み、ひざの関節のはれや痛みが起きやすい人です。すぐに大汗をかいて疲れを感じる事も多いかもしれません。
このタイプの肥満には、防己黄耆湯が大変よく効きますが、浮腫みがひどい時には附子(ぶし)という生薬を追加して『防己黄耆湯加附子』として用いられる事もあります。

先ほどの防風通聖散のタイプと似てガッチリとした実証タイプの人でも、便秘がちで、上腹部が膨って苦しく、しばしば肩こりや耳鳴りを生じる人の肥満には『大柴胡湯』が有効な場合があります。
大柴胡湯はもともと胆のう疾患や肝機能障害、高血圧などの治療に使う事も多い漢方薬であり、これらの疾患を併せ持っている人の肥満の治療には最適な漢方薬かもしれません。

上記以外の体質の人はどうしたら良いのでしょうか。
例えば、標準体型の女性の場合などです。
先ず、標準体重以下の人は、肥満に対する漢方は飲むべきではありません。食養生で過食を抑え、『四君子湯(しくんしとう)』、『六君子湯(りっくんしとう)』などの胃腸の調子を整える漢方薬を使うことで、少量の食事で満足が出来る状況を作ります。
ストレスからくる一過性の過食を抑えるには、『抑肝散(よくかんさん)』や『抑肝散化陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)』も有効です。

標準体重はオーバーしているが、上記の体質に当てはまらない人は『防風通聖散』を用います。
防風通聖散は、漢方の中では比較的近代の薬、12世紀に造られた薬であり、体質が違う人にもある程度有効な便利な漢方です。(他の漢方の多くは古典的漢方であるが、紀元200年頃には完成していた)
しかし、比較的体力がない人、特に冷え性がある人が防風通聖散を飲む場合は注意が必要です。
防風通聖散は熱が余分にあるタイプの人を想定して造られているため、冷ます生薬が多く含まれています。冷えがある人が防風通聖散を飲むと、効果が減弱するばかりでなく、冷えを助長する事もあります。
我々人間は、もともと冷えから凍死する事が多かった生き物であるため、全身性の冷えを感じると、生命中枢であるお腹に脂肪を付ける事で生命を守ろうとします。
そのため、防風通聖散で体重は減っても、お腹の脂肪は増える=ポッコリお腹になる可能性があるのです。
私は、冷え性の人の場合は、防風通聖散と四君子湯を併用する事によって、胃腸を整え、全身を温める事でポッコリお腹を防ぐようにしています。

漢方をうまく使って、コロナ太りを防いでいきましょう。

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