男性更年期障害の場合は、血液中の男性ホルモンであるフリーテストステロン(FT、もしくは遊離テストステロン)の値によって治療方針が決められるという話をしました。すなわち、フリーテストステロンが低値(8.5未満をLOH症候群と呼称します。)である場合は、男性ホルモン補充療法(ART)を中心に治療を行い、フリーテストステロンが11.8以上であれば、ホルモン補充療法の適応にはなりません。この中間にあたる数値、すなわちフリーテストステロンが8.5以上11.8未満である場合を境界型LOH症候群と呼びますが、この場合は症状・所見などより、ホルモン補充療法を行うか否か判断します。
フリーテストステロン値11.8以上の男性更年期障害は、漢方薬・サプリメントを中心に治療を行います。この場合は漢方薬などの治療に男性ホルモン補充療法を併用する事は原則としてありません。
一方、LOH症候群や境界型LOHの場合でホルモン補充療法をおもな治療方とした場合は、漢方薬などを補助治療として併用する事が少なくありません。当、代官山パークサイドクリニックでは、男性ホルモン補充療法を施行している80%以上の患者さんが漢方薬も併せて飲んでいます。
男性ホルモン補充療法は、ホルモン欠乏による症状を直接緩和するという面では即効性もある非常に優れた治療法です。しかしLOH症候群の根本的治療という観点で言うと、男性ホルモン補充療法には宿命的な弱点があります。
以前のコラムにも書きましたが、もともとホルモン補充療法というものは、身体のホルモンの分泌能力を直接増加させる効果は無いのです。これは総てのホルモン補充療法に共通して言える事です。しかしLOH症候群に於いては、身体の負のフィードバックが解ける事によって男性ホルモンの分泌量が本来のレベルを回復し、LOH症候群から脱却するケースが認められる事があります。もちろん男性ホルモン補充療法単独でLOH症候群から脱却した症例もありますが、漢方薬やサプリメントなどを併用した症例の方がはるかに高い確率でLOH症候群から脱却し、なおかつ自覚症状の改善も高いものがある様に見受けられます。そのため、当クリニックでは漢方薬による治療のサポートを早期からお勧めしています。
男性ホルモン補充療法は先のコラムにもある様な理由で補充療法自体を中断もしくは中止する場合がありますが、漢方薬による治療は不具合があった場合でも処方変更をする事により治療を継続する事が可能です。そのため漢方薬による治療を併用する事により治療の確実性が増します。また当クリニックでの男性ホルモン補充療法は2~4週間の間隔で10回の注射を1クールとして行っていますので、治療経過が順調であっても約5~9ヶ月で男性ホルモン補充療法は終了となります。漢方薬はホルモン補充療法終了後でも内服が可能ですので、治療の継続性という面でも漢方薬の併用は好ましいと考えます。
男性更年期障害については、
当クリニック、LOH症候群・男性更年期外来のページよりご覧ください。
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