男性更年期障害という概念は、一般的な認知が低く、社会的にも理解が進まず、診断が出来る医師も少ないという現実があります。
これはなぜでしょうか?
この最大の原因は、ずばり“男性更年期障害の判りにくさ”にあります。
女性の更年期障害と比較して考えると、男性更年期障害の問題点が良く分かります。
女性更年期は閉経といった自分にも他人にも分かり易い(=目に見えやすい)指標を持っています。自分も周囲の人たちも更年期年齢=閉経年齢の前後という認識を持っていますし、その年齢は閉経が50歳前後でほぼ一定しています。
実際、女性の更年期年代は、学会の定義では閉経の前後5年、すなわち45歳から55歳と定義されています。ただし、近年は女性更年期障害の年齢が後ろ倒しされる傾向にあるため、実際的には60歳位まで更年期年齢であると私は考えています。
そして、その更年期年代にほてり、冷え、発汗の三大症状や精神症状を有するものが、女性更年期障害であると考えられるのです。
それに対し、男性更年期は、自覚症状や他覚所見が単なる加齢性の変化と見分ける事が困難であり、自身も家族を含む周囲の人たちにも判りにくいという面があります。
これは、診断する医師にとっても同様で、男性更年期障害を診断する事は、専門家であったとしても実は困難なのです。
そのため、男性更年期については、自覚症状はもちろんですが、より検査データを重要視しています。
女性更年期障害でも女性ホルモン=エストラジオールの測定を行って診断しますが、男性更年期における男性ホルモンの測定の方が、検査結果が診断に占める役割がはるかに大きいという事です。
そのため、男性ホルモンの値によって診断基準が定まる『LOH症候群』とう概念が提唱され、使われています。
LOH症候群とは、Late onset hypogonadism syndrome の略で、『加齢男性性腺機能低下症候群』という意味であり、読み方としては『ローショウコウグン』となります。
LOH症候群というのは、多岐に渡る男性更年期の症状、所見の中で、男性ホルモンの低下を必須項目とした、男性更年期障害の概念です。
ここでは、便宜的に男性更年期障害=LOH症候群として話を進めます。
LOH症候群の診断には、男性ホルモン値が用いられますが、わが国では、より精度の高い測定法である、遊離型テストステロン(フリーテストステロン、略号FT)が用いられます。
フリーテストステロンとは、男性ホルモンの総量である総テストステロン(もしくは単にテストステロン、略号T)の中で、実際に働いている男性ホルモンの事です。
例えるなら、テストステロンが農村の総人口とすれば、フリーテストステロンは労働人口です。農作物の収穫量=男性ホルモンの働きを評価するなら、村の総人口よりも労働人口の方が正確。男性ホルモンの働きの有無を推し量るには、テストステロンよりもフリーテストステロンの方が正確に評価出来るという訳です。
では、実際に男性更年期障害=LOH症候群が疑われる人が外来を訪れた場合は、どの様に診断が行われるのでしょうか。
先ずは、自覚症状をAMSスコアという国際的にも標準化されたLOH症候群を診断するためのスコアシートを記入します。その合計点が27点以上である場合、LOH症候群を疑ってフリーテストステロンの血液検査を行います。
その結果での診断は、以下となります。
① フリーテストステロン8.5未満:LOH症候群
② フリーテストステロン8.5以上、11.8未満:境界型LOH症候群
③ フリーテストステロン11.8以上:正常型
上記の①と②がLOH症候群=男性更年期障害と考えられます。
カテゴリー別の大まかな治療方針としては、①LOH症候群の場合はホルモン補充療法を治療の中心に据えて、補助療法も併用します。
上記③の場合は、症状が強くても、ホルモン補充療法は適応にはなりません。漢方やサプリメントなどの補助療法を行います。
②の境界型LOH症候群の場合は、補助療法を基本に、その効果が少ない場合や、もともと症状が強い場合には、ホルモン補充療法を行います。
ただし、男性更年期障害=LOH症候群は、他に見分けなくてはいけない疾患や医学的異常が多く存在するため、専門家を受診する事が必要となります。
特に、ネットなどで売られているサプリメントなどには、粗悪なものや間違えた使い方をすると危険なものなども存在するため、十分な注意が必要です。
補助療法としては、医薬品として用いられている漢方薬や、EPA製剤なども有効ですが、サプリメントでは、私岡宮が監修した『爽快美男』が安全かつ有効です。
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