「麻黄湯」ってどんな漢方?
ツムラの手帳によると、「麻黄湯」の適応は以下となっています。
自然に汗の出ないものの次の諸症:
感冒,インフルエンザ(初期のもの),関節リウマチ,喘息,乳児の鼻閉塞,哺乳困難
このように、風邪の諸症状や、インフルエンザにも効くとされています。また、小児にも適用のある漢方とされているのも解りますね。実際に小児科にインフルエンザで罹ったら「麻黄湯」が処方された、という経験がおありの方も多いのでは無いでしょうか?
そんな「麻黄湯」がどんな漢方薬なのか、解説したいと思います。
麻黄湯の構成生薬
感冒と麻黄湯
高熱が出る感冒の初期に最適な漢方薬が「麻黄湯」です。
麻黄湯が最も真価を発揮するのは
、高熱が出て急に悪化するタイプの感冒の初期です。
寒気がして、首筋が強張り、関節が痛み、頭痛がする。それに伴い体温が急上昇。寒気はするが、汗はかかない。布団に入って温まろうとしても、震えて歯の根が合わない。といった症状の時に最も即効性を発揮する感冒薬です。
体を温めると同時に、なるべく早めに麻黄湯を内服すると、体を芯から温め、発汗を促し、それに伴い感冒の症状を改善する働きがあります。
感冒に用いる漢方というと葛根湯が有名ですが、葛根湯が7つの生薬から構成されているのに対して、麻黄湯は4つの生薬から構成されているシンプルな構成となっています。漢方薬は、構成生薬が少なければ少ない程即効性が期待できる傾向にあります。そのため、麻黄湯は、葛根湯より即効性が期待されるのです。
麻黄湯とインフルエンザ
上記の様な急な高熱や関節痛を伴うものとして、インフルエンザがあります。インフルエンザは、インフルエンザウィルスの感染によって生じる感冒症候群のひとつ、広い意味では感冒といえますが、インフルエンザは、症状の進展が極めて早く、重症化すると生命にかかわる可能性もある病態です。
また、インフルエンザの際には、通常の感冒に対して用いられる消炎鎮痛剤を用いると副作用などの観点から好ましくない事も知られています。この消炎鎮痛剤は、医師が処方する西洋薬の感冒薬だけではなく、一般的に薬局で売られている総合感冒薬にも含まれているため、注意が必要です。
その点、漢方薬であれば、インフルエンザに際しても、上記の様な副作用を気にせずに内服する事が可能です。
さらに、タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬との併用も可能です。
また、漢方薬であれば、感冒治療にさいして、自己治癒力を阻害しないために、即効性も期待できます。
さらに、西洋薬の感冒薬のもつボーっとする副作用もありません。その上、成分の麻黄の成分であるエフェドリンの効果により覚醒作用があります。つまり“感冒薬の副作用で、少しシャキッと元気になる”のです。これは嬉しいですね。
小児のインフルエンザと麻黄湯
麻黄湯も漢方薬ですので、体質【証】によっては内服が適切ではない場合もあります。
本来、麻黄湯の体質【証】は、本来比較的体力があり、体格が良く、冷え等を持っていない実証タイプの人に使います。そのため、成人であれば、女性などの冷えが内在している人にとっては、麻黄附子細辛等などの方が適していると考えます。
麻黄附子細辛湯のコラムはこちらをご覧ください
しかし、小児には麻黄湯が良く効く場合が多く見られる様です。
なぜかと言うと、子供の体というのは、実は熱のかたまりです。子供で冷えを訴える子は少ないですし、雪など降った時などは、うきうきして外で遊びたがります。中年以降になるとこうはいきません。それだけ、小児は熱が多い=実証傾向にあるといえます。
そのため、実証の漢方である麻黄湯が良く効くのです。
抗インフルエンザ薬との併用も全く問題はありませんので、安心です。
その他、乳幼児の哺乳困難や鼻閉塞、喘息にも効果を発揮しますので、この様な症状のお子様をもって、悩んでいるご両親は、漢方薬の内服も検討されても良いかもしれません。
麻黄湯の注意点
漢方薬は、比較的大きな副作用は出にくい薬ではありますが、薬である限りは、副作用が出ないか確認する事が重要です。
特に、麻黄湯は実証向けの漢方、いわば“強い漢方”です。
漢方薬は、一般的に、自分の証(体質)より弱い漢方を飲む分には、副作用などは少ないのですが、強い漢方を飲む分には副作用が出る可能性が高く、なおかつ効果も少ないという面があります。
そのため、麻黄湯を内服する時には、内服が適切か否かを慎重に判断する必要があります。感冒で短期間内服する場合もそうですが、特に、喘息や関節リウマチなどで長めに内服する時には慎重な内服が重要です。
また、麻黄湯は麻黄が5gと、多く内服されています。麻黄はエフェドリンと言う物質に体内で変化します。このエフェドリンは心身の活性効果がありますので、眠気などのない感冒薬として便利です。
しかし、高血圧や虚血性心疾患、不整脈などの地病を持っている人は、慎重な内服が必要になります。
医師の診察のもとで処方を受ける事が重要な漢方薬と考えます。
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